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最高裁判所第三小法廷 昭和55年(行ツ)42号 判決

東京都中央区銀座三丁目八番一三号

上告人

エムプレスベッド販売株式会社

右代表者代表取締役

岡本柳太郎

右訴訟代理人弁護士

江尻平八郎

鵜川益男

安藤貞一

東京都葛飾区立石六丁目一番三号

被上告人

葛飾税務署長 小田虎雄

右指定代理人

鈴木実

右当事者間の東京高等裁判所昭和五二年(行コ)第六号物品税決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五四年一二月二〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。

よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人江尻平八郎、同鵜川益男、同安藤貞一の上告理由第一点について、所論の点に関する原審の認定判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は失当である。

論旨は、採用することができない。

同第二点について

所論の点に関する原審の認定判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第三点について

所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができ、右のように解しても違憲の問題を生ずるものでないことは、当裁判所昭和二八年(オ)第六一六号同三〇年三月二三日大法廷判決(民集九巻三号三三六頁)の趣旨に徴し、明らかである。論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横井大三 裁判官 環昌一 裁判官 伊藤正己 裁判官 寺田治郎)

(昭和五五年(行ツ)第四二号 上告人 エムプレスベッド販売株式会社)

上告代理人江尻平八郎、同鵜川益男、同安藤貞一の上告理由

第一点 本件課税処分は憲法第一四条により法の下に平等であるべき上告人に対し、その基本的人権を侵害し且経済的な差別をしているものである。

即ち、家具類の販売業者の中には上告人と同様に数多くの業者がその販売する商品の買付についてその商品の製造業者と経済的に密接な関係を持っていることは当然である。

そのような関係を持たないと長期に亘って資金をねかせる家具業者の営業は成り立って行かないのである。法第七条一項のみなし規定が厳格に適用されると殆んどの業者がその適用を受けるに至ることは必然である。そこで税務署は行政指導面を強化してその違反のないよう指導に当たらせて居り、上告人会社も約六箇月以上の長期間に亘りそのような指導を受け、改善の実をあげていたことはその指導を担当していた係官がそのことを認め第一審法廷で証言をしていたのである。ところがその後間もなく突然に上告人だけが狙われて今回のような課税処分を受けたものである。

然も、みなし課税を受けた業者は上告人会社だけであって他の同業者は全然そのような処分を受けていないことが判明している。

そうだとせば、上告人会社だけを狙った今回の課税処分は違法であって、これまさに憲法第一四条の法の下に平等であるべき上告人の基本的人権を侵害し且つ経済的な差別をしているものとしてその処分は、当然に取消さるべきである。

第二点 上告人と訴外会社との間における家具類の取引については原価計算及び適正利潤を計上した客観的な取引価格が形成されていた。

そうして両社とも経済的には各独立して経営されていたものである。即ち、製造業者としての適正な利潤に原価計算に基く生産性をプラスしたものが、訴外会社から上告人に対する卸価格となっていた。

又、上告人は右卸価格に販売業者として通常に考えられる適正な利潤を加算して小売価格を形成していたものである。

この間におけるいわゆる商品の流通は自然の経過において生産業者より販売業者に流れていたのであるから、かかる事態においては直ちに告示第八号を適用すべきものではない。

先づ当局は、厳正にして適確な資料に基き販売価格の試算をなし、その当否を充分に検討した上で、慎重になすべきであるのに、今回の課税は、唯漫然と確たる資料もなく、厳格なる原価計算もせず国税庁長官の定める金額を適用して課税標準を算定した上に課税処分をしたのは違法である。

第三点 告示第八号は憲法第三〇条の租税法定主義に違反した無効のものである。

従って、右告示第八号に基き、それを根拠としてなした今回の課税処分は無効である。

以上

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